chikyu Bijo Nendaiki

女性美を医学的・性愛学的・九星占術の視点で追究します。

★光の追憶(抜粋・無料sample)

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 僕は二人が本当に病気だと思い込んでいた。条件反射かどうか分からないが、とうとう兄の寝室に押し入ってしまった。その時兄と佐和子さんはあらわなままでいた。佐和子さんは、白い胸を揺らしながら仰向けに寝ている。幹夫さん、幹夫さん、と佐和子さんは叫んでいた。陶酔した彼女の顔をみて、僕は不思議な感覚を抱いた。それまで抱いた事のない女の世界があった。
 彼女の汗がベッドのシーツに沈んでいた。佐和子さんと僕の目が微妙に合ってしまう。僕は近くまで忍び寄った。兄は目を瞑りながら行為をしていたから、僕にはしばらく気づかなかった。兄は彼女の白い胸に顔を埋めている。佐和子さんの股間に激しく腰を押し付けていた。僕はその時、二人はアクメの最中だとはまったく判らなかった。目を瞑りながら、僕は立ちすくんでいるだけであった。兄が気づいて怖そうに僕を睨んでいた。
おい靖夫、見てんだよう、ガキのくるところじゃねえんだよ、早くでていけ、と兄に言われた。それまでいつも優しかった兄は、その日に限って冷淡であった。
 いつもの兄の顔ではなかった。佐和子さんが失神しているとき、僕は素っ裸の兄に激しく叱責されていた。僕は思いっきり顔を殴られた。そのあざはいまでも消えていない。心の痛みも。兄が亡くなる一週間前の事である。
 佐和子さんはそのことは知らないはずである。殴られたのは部屋の外でもあったし、だいいち彼女は性行為の疲れで、安らかに眠っていたからである。兄はそれ以降、僕とはあまり口をきかなくなってしまった。兄は知らないところですっかり豹変してしまっていたのだ。兄はマリファナを常用するようになっていた。検視でそれが判った。二人の夜の行為は、僕が大人の雑誌に目を通すきっかけを作っていた。アクメという言葉を知ったのは、それから後になってからである。僕は男女に関する本を読み漁るようになっていた。だが、それは少年にとっては苦痛でもあった。女に関する情報をいくら頭に詰め込んでも、少年の想像力などたかが知れている。僕の貧弱なイメージだけでは限界だった。
明子が産まれて以来、佐和子さんは育児や二人の夫婦生活に疲れきっていた。兄が以前の女たちと、再び関係を結びだしたのである。彼女が妊娠してお腹が目立つようになってからだ。兄には佐和子さんが妊娠して以来、夫婦の関係を築けないもどかしさもあったのだろうと思う。結婚前はプレイボーイの名を欲しいままにしていた兄は、世帯を持つようになってからは生活は地味になっていた。僕には理想的なカップルに見えていた。だが、佐和子さんは兄の動向がいつも気になっていたようである。僕には時折、本音を吐いて憂さを晴らしていた。貞淑な佐和子さんにとっては、兄の浮気は許しがたい行為だったのである。
 僕の想像だが、兄にとっては、出産間もない佐和子さんとの夫婦生活が出来ないもどかしさがあったのだと思う。僕は育児に懸命な佐和子さんが微笑ましく思っていた。兄への妻の役目どころではなかったらしい。兄は明子が生れる前から、家を空ける事が多くなった。毎月の給料も必要最低限しか渡さなくなっていた。それでも、佐和子さんは献身的に妻の努めを果たそうとしていた。二人の夜の行為は月に数える程度になった。
 兄の初七日が終わり、僕は熱を出して寝込んでしまった。佐和子さんは明子の育児のかたわら、僕を看病してくれていた。風邪ではなかった。今想えば、生前の兄と佐和子への気遣いが、少し重荷になっていたのかもしれない。熱は三日三晩続いた。佐和子さんは、僕が風邪だと思い、子供に移るといけないわね、と言い、僕と添い寝をしていた。

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