chikyu Bijo Nendaiki

女性美を医学的・性愛学的・九星占術の視点で追究します。

★フレグランスの恋(抜粋:無料sample)


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<学園ミステリー>


 真理亜の突然の休みでH美術大学のアトリエ内では混乱していた。ウェブデザイン科の水沢明彦は学内では変人で通っている。その天真爛漫な性格は女学生には受けている。
 いわゆるムードメーカーだ。亜希子と明彦とは姉弟的な雰囲気でもあった。亜希子の気持にはそれ以上の感情はない。
 長髪にサングラスの明彦はいつもニコニコと言いたいことを容赦なく人に話しかける。以前フットボールで鍛えた見事な体格の一部始終はだれも目にしたことがない。ユーモアに富んだ彼の存在感はみんなが認めるところだ。人の良すぎる点以外は。
 心情的に損や得の計算ができない性格なのだ。駆け引きは一切考えない。就職などどだい無理な話だ。要するに世渡りは苦手とみえる。三年先輩の文也とも少し似ているといわれる。
 政成たちが心配そうに話しかける。
「真理亜ちゃん、どうしたんだろう。今日は来るのかな・・・」
「さぁ、こないかも・・・」
「困るよ。今日課題の最終日だよ」   
「樫田教授、寸評に来る日だろ・・・」
「真樹ちゃん。千里さんに聞いてきて」
 教務室にメールで連絡が入っていた。
「今日はパスだって・・・」
「えーっ・・・」
 アトリエは騒然とする。ニセ学生は四人いたが彼らも肩透かしをくらってしまう。
「どうする?」
「今日はやめだな・・・」
「でも、一日モデルがいないんじゃ・・・」「それもそうだな・・・」
 みんなは最後の仕上げが出来ない。
「教授が今日は各自別の課題習作をやるようにだとよ。明日真理亜ちゃんがきたら、考えるってさ・・・」
 一茂が野永助手から連絡をうけたらしい。「じゃ、適当に何か描こうかな・・・」
「描くと言っても何をかけばいいんだよ」
 政成がいつになく穏やかではない。
 明彦はこの日デザイン科から鉛筆デッサンでオープン参加だ。イビキをかいて朝早くからアトリエの隅で寝ている。前日の合コンで飲み過ぎたらしい。
 ニセ学生たちも呆れている。 彼らはモデルが来ないからといって帰るわけにもいかない。下手には動くわけにはいかないのだ。本学の学生が制作以外に目を向いているから彼らはどこの科と聞かれる可能性があるからだ。
「困ったな・・・」
「困ったわね・・・」
 打開策を考えているものがいる。意地悪好きな政成だ。小声で一茂に話している。アトリエにいる全員にも伝わる。明彦以外は。
「そんなこと。彼に悪いわよ。よしなさい」かおりがバツわるそうに政成にいう。
「だぁいじょぶさ。まかせな・・・。あいつも人がいいから・・・」
「わたしも反対よ・・・」
 和美や佐和子をはじめ過半数を占める女性陣に咎められる。
「でも、一度視てみたいだろう?」
「いやよ・・・」
 かおりは以前から明彦とつき合っているが男女の関係ではない。興味はあるが。いやよと言いながら目は潤んできている。他の女性陣も同じだと政成はみている。
「教授には内緒だぞ・・・」
 みんなはしかたなく?相づちを打つ。
「あいつに当たるようにアミダをしようぜ」「でも、わたしに当たったらどうしよう」
 真樹が言う。
「わたし、あんまり制作意欲かき立てるような体じゃないし。ヌードはいや・・・」
 かおりも反論する。
「女の子はナシだ。やらなくていいよ」
 明彦がようやく目を覚ます。政成が事情を説明する。まさか自分が当たるとは夢にも思っていないようだ。
 かおりは少し興奮している。
「かおり。だめだ・・・」
 かおりが明彦に耳打ちしようとすると政成が首を横に振る。
「なんだよう。さぁ、はじめようぜ。誰に当たるかな・・・」
「相変わらずノー天気だな。アイツ・・・」 みんなも呆れている。
 男子十人がアミダをする。明彦ではなく博志に当たりそうになる。みんな首を振る。誰もがきゃしゃな博志のものは視たくもないと言うような顔をしている。明彦がよそ見をしているうちに政成はとっさに線を一本引く。大当たりだ。 
 明彦が大声で叫ぶ。
「うわぁ、そりゃないよぅ・・・」
 みんなは拍手喝采だ。恐ろしい事件はみんなの目の前に迫ろうとしている。予測はできない。人のいい明彦は事情がまだ飲み込めていないようだ。安易に考えている。
 女子学生たちは眼の視線をどこに定めようか思い悩んでいる。
「明彦。じゃぁ、はじめてくれ・・・」
 政成も同性のわりには紅潮している。
「わかった。コスチュームでいいんだろ?」「コスチュームだと?」
「だってそういう約束じゃん・・・」
「何言ってんだよ。フルだよ。フル・・・」「おい、冗談だろ?そんなこと・・・」
 かおりも他の学生たちも、ニセ学生たちも内心期待をしている。男のヌードモデルは、経験がないからだ。
「しょうがねぇな。知らねえぞ・・・」
 明彦は表向きには自信なさそうな態度だ。明彦がかなりのナルシストであることはまだ誰も知らない。
 着替え室で明彦は衣服を脱ぐ。窓からは太陽の光線が眩しい体を被っている。
「おまたせ・・・」
 アトリエに異様な雰囲気が漂った。
「私・・・・風に当たってくる・・・」
 かおりは機嫌が悪い。明彦の裸体があまりにも刺激的だからだ。自分だけの世界が他人にもさらけ出されようとしていたからだ。他人と明彦を共有するなどもってのほかだ。ジェラシーと言えなくもない。明彦の小麦色の厚い胸板、腰の曲線、異様に発達した脚部はアトリエに閉じこめられた彼らを虜にしている。
 女子学生は驚嘆しながらも、我慢をしながら何喰わぬ顔をしている。
 着替え室から明彦が顔を出す。その前に体の中心から鋭い鉄柱がはみ出ていた。
(えっ、うそでしょ?)(すごいわ・・・)(・・・・・・)
(どうしよう・・・)
(バカか、あいつ・・・)
(ほんとだよな・・・)
 政成や一茂たちも異様な光景に戸惑っている。なんだこれは・・・。やめときゃよかったというような顔をしている。
 小野和弘、野添早紀、脇坂純子、有吉聖一の四人はニセ学生だ。
 彼らも明彦のヌードに目を奪われている。だが、もう遅すぎた。
 ミケランジェロのダビデ像と同じポーズをとることにした。みんなの意見だ。
「これでいいのか?」
「・・・あぁ、いいよ」
「そんな感じよ・・・」
 みんなの話ぶりがいつもと違う。明彦は、いつもの笑顔だというのに・・・。
 かおりが戻ってきた。
「うっ・・・・・」
 いくぶん嘔吐気分だ。真樹とひかるは平然としているふりをする。
「あなたたち、平気なの?」
 三人は表に出る。
 温かな陽光が気持ちをすこし和らげる。
「かおり。あなた明彦の視たのはじめてじゃないでしょ?」
「何言ってるの。そんななかじゃないわ。みんな知らないの?
 彼の本命は亜希子さんよ・・・」
「あのモデルの?」
「でも、ここしばらく来てないわよね」
「そうね・・・」
 かおりは溜め息といっしょに片思いの風情もみせている。
 ひかるは結構観察力に鋭いところがある。自分の局部も鏡を見ながらリアルに描ける力は誰もが認める。ただ、リアルすぎて鑑賞には堪えない。本人も言っている。
「でも、なに、あれ・・・」
「すごいわね・・・」
 噂は女子学生に口コミであっという間に構内に広まっていた。
 アトリエの回りには窓越しでみているものもいる。
  困ったもんだと明彦も自信の笑みを浮かべる。ナルシストの表情だ。
(だから、いっただろ。後悔しても知らねぇよって。でも、困るんだよな。外から覗くのは・・・。ローマのコロッセオスタジアムにいる感じになって来るじゃん。ローマの剣闘士に見えるかい?おい、そんなに見つめないでくれよ・・・)
 タイマー音がなる。ワンポーズは二十分が限度だ。立ちポーズは結構体力が必要だ。
 真理亜も亜希子、それにアンナも早苗ちゃんもよくやっているなと明彦は感心する。
 アンナと早苗は別棟のアトリエでダブルポーズだ。二人でやっている。みんな持ち場をはなれて見に来ている。アンナと早苗も隠れるようにみている。
 早紀と純子は手が動いていない。じっとみているだけだ。他の学生たちは、たぶん構図を考えているんだろうとしかみていない。
 彼女たちは興奮しているとは誰も思ってはいない。ふだんは経済専攻だから、デッサンしようにもすぐ描けないのだ。真理亜がモデルだったら絵の具を使うので何とか体裁は整えることができたのだが・・・。
 五分休んだら二回目のポーズだ。明彦は足の位置とポーズの形を確認する。
 政成がオーケーの合図をする。 
 明彦に突然魔が差しはじめていた。無意識の彼の想いは誰も知らない。窓の外でも本学の学生たちが盗みデッサンをしている。この日は一日だけの超人気課外授業だ。そのことは教務室の野永は知らない。朝から自主授業となっていたからだ。
 ポーズをしながら明彦は亜希子のことを思い出していた。無意識にやって来る男としての衝動を覚えた。
 森の中にいるエイリアンが眠りから目覚めている。長さ四十センチの生き物がゆっくりと動き始めた。青い大理石の塔がどんどん肥大してくる。そして鉄のように硬くなる。彼女たちの目の前に迫ってきた。十センチは確実に大きくなっている。百八十センチの身丈からはどうみてもアンバランスな形態だ。
 女子学生たちは始動する前の姿だけでも驚愕していたが、また新たな世界が現われてきたのだ。内緒で唾を飲み込んでいる。
 女子学生たちは、ゆっくりとバージョンアップしていく塔の様子を見つめている。みんな唖然としている。
 彼女たちはさっそく家に帰ったら部屋の中に閉じこもるのは目に見えている。
 決してそのイメージからは逃げることは不可能のように思える。
 政成も一茂も声が出ない。腰を抜かしている女の子もいる。最悪の状況だ。その塔の角度は最高値に達する。平行どころではない。そこから更に四十五度も明彦の顔に向かってきているのだ。(なんてこった。まずいな・・・)
 明彦にはどうすることもできない。
 普通の女の子だったらすでに大声をあげているところだ。女子学生達は我慢して息を殺しているようにみえるが、みな気持ちの中は混沌としている。
 時折コブラのような目は辺りをみまわす。わずかな振動でもおおきく反動で揺れている。時間がすべて止まっている。アトリエの中はそういう感じだ。
 一見、明彦は申し訳なさそうな態度をとっている。
 常識的には険悪な雰囲気が漂いそうだが、明彦の隠し事をしない明け透けな性格にみんなはホッとしている。
 ひかるだけはものすごい集中力でどんどん枚数を重ねていく。五十枚は下らない。速くめくっていくと動いているように見える。まさに動画のアニメーションのようだ。一度ずつの角度で動きを正確にとらえている。
 ハイスピードのラフスケッチだ。
 早紀は手首と指を自分の股間に挟み込んでいる。濡れた手をタオルで覆っている。
「すげぇだろ、みんな・・・」
「あほか・・・」
 一茂が笑いながら言う。
「ほんとよね・・・。フフフ」
「ははははは・・・・」
 爆笑の嵐に明彦も内心安堵している。
「政成、このやろう・・・」
 明彦は笑いながらアトリエの中で政成を追いかける。エイリアンはその都度、激しく揺れている。時にはニセ学生の早紀と純子の口にニアミスをする。
「いやだ。何よ・・・」
 この夜、間違いなく早紀たちは眠れぬ森の淑女となる。
 まさにニュー・フェイス誕生の日だ。 
 特異な状況はワンポーズだけであった。外から見ている者もカルチャーショックを受けている。誰もが放心状態でアトリエを後にした。
 野永千里がアトリエの鍵の確認にきていたが、驚いた様子だ。誰がモデルかすぐわかった。明彦にひそかに抱いている自分の心にも気づき始めていた。
(私も見たかった・・・。個人的に・・・)「おい、明彦。みんなでメシいこうぜ」
 政成が声をかける。
「そうだ。そうだ。ついでにスター誕生のお祝いでもしなくっちゃ・・・」
「そうね。そうね・・・」
「よし、会費集めるぞ。一人二千円だ」
「明彦は体で払っているからな。
 今日はいらないよ・・・」
「ひやかすなよ。もうやらねぇぞ」
 ニセ学生たちも紛れ込んでいた。

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